大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)1464号 判決

被告人 大塚ミサヲ

〔抄 録〕

東京地方検察庁検事正代理検事岡崎格の控訴理由は、末尾添付の控訴趣意書記載の通りである。

所論に鑑み、本件記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調の結果をも加えて、原審の科刑の当否を検討して見ると、原判示第一の夫繁蔵殺害の犯意は三箇月余の長きに亘つて継続した強固なものであり、その間再三再四に及んで実行の手段方法を綿密に計劃した事情のあること、店員に金員を与えて兇器を購入させ、毒物を入手しようとし、或は再度に亘つて他人に数万円の金員を与えて夫の殺害を依頼し、殺害の上は巨額の金品を供与する約束をしてその実行を慫慂し、且つしきりにその実行を督促するなど飽くことなく執拗であつたこと、他人に勧めて犯罪を実行させ自己はその刑責を免れようとし夫殺害後の自己の生活の安定を計らんと考慮しての利己的意図の下に行はれたものであると看取されること、更に原判示第二の幼ない四女登美子を死に致した点は、右殺人未遂の犯行に供した毒物入の飲料を、更に同目的の為に使用しようとして一時隠し置こうとするに際し、その不始末から惹起されたものであること、並に各犯行の罪質、その他諸般の情状を考え合せると、その犯情たるや、決して軽視することを許さないものがあるのであつて、人命の尊重と一般予防の見地からしても、たとえ本件犯行が、夫繁蔵の女色に狂い家庭を顧みず、被告人を冷遇酷使した結果に基因するものであり、しかも当時被告人は懐妊中で心の平静を欠き易い状態に在つたことがうかがわれ、犯行後改俊の情の見るべきものがあり、夫繁蔵もまた従前の非行を改め家庭に復帰し、被告人と共に円満な家庭生活を営むの決意を抱くに致つたことなど、諸般の情状を斟酌して見ても、とうてい刑の執行を猶予すべき事案とはいわれない。それで原審の懲役三年の刑はあながち失当といわないとしても、その刑の執行を猶予し保護観察に付するの言渡をするがごときは、まさに量刑軽きに失するものというの外はない。従つて検察官の量刑不当の論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

(尾後貫 堀(真) 西村)

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